後遺症による逸失利益
交通事故被害に遭って後遺症が残ってしまった場合、後遺症のせいで労働能力が喪失または低下し、後遺症が残っていなければ将来得ることができた収入を得ることができなくなってしまうことがあり得ます。
この、もし被害者に後遺症が残っていなければ将来得ることができた収入相当額の損害が後遺症による逸失利益であり、この損害を加害者に請求することが可能です。
後遺症による逸失利益の算定方法
後遺症による逸失利益は、以下の計算式で算定します。
基礎収入額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
基礎収入
給与取得者
原則として事故前の収入を基礎収入とします。
ただし、若年者の場合は、将来平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が高ければ平均賃金を基礎収入とすることがあります。
事業所得者
原則として事故前の申告所得を基礎収入としますが、申告額と実収入額が異なる場合は、実収入額を立証できれば実収入を基礎収入とします。
収入額が平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の平均賃金を基礎収入とします。
主婦
専業主婦の場合、女性労働者の平均賃金を基礎収入とします。
兼業主婦の場合、実収入が女性労働者の平均賃金以上のときは実収入により、平均賃金を下回るときは平均賃金を基礎収入とします。
幼児・学生
男女別の平均賃金を基礎収入としますが、女子の場合は、男女計の平均賃金を基礎収入とすることが一般的です。
高齢者
就労の蓋然性があれば、男女別の平均賃金を基礎収入とします。
失業者
労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものは、再就職によって得られるであろう収入(原則として失業前の収入を参考にします)を基礎収入とします。
ただし、失業前の収入が平均賃金以下の場合は、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の平均賃金によります。
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺症により労働能力が喪失または低下してしまった程度を割合で示したものです。
労働能力喪失率は、原則として以下のとおりとされています。ただし、被害者の職業、年齢、性別、実際の稼働状況などにより増減することがあります。
後遺障害1級の場合
労働能力喪失率は100%とされています。
(第1級の後遺障害に関しては、第1級の後遺障害、第1級の後遺障害(介護を要する後遺障害)もご参照ください。)
後遺障害2級の場合
労働能力喪失率は100%とされています。
(第2級の後遺障害に関しては、第2級の後遺障害、第2級の後遺障害(介護を要する後遺障害)もご参照ください。)
後遺障害3級の場合
労働能力喪失率は100%とされています。
(第3級の後遺障害に関しては、第3級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害4級の場合
労働能力喪失率は92%とされています。
(第4級の後遺障害に関しては、第4級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害5級の場合
労働能力喪失率は79%とされています。
(第5級の後遺障害に関しては、第5級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害6級の場合
労働能力喪失率は67%とされています。
(第6級の後遺障害に関しては、第6級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害7級の場合
労働能力喪失率は56%とされています。
(第7級の後遺障害に関しては、第7級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害8級の場合
労働能力喪失率は45%とされています。
(第8級の後遺障害に関しては、第8級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害9級の場合
労働能力喪失率は35%とされています。
(第9級の後遺障害に関しては、第9級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害10級の場合
労働能力喪失率は27%とされています。
(第10級の後遺障害に関しては、第10級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害11級の場合
労働能力喪失率は20%とされています。
(第11級の後遺障害に関しては、第11級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害12級の場合
労働能力喪失率は14%とされています。
(第12級の後遺障害に関しては、第12級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障13級の場合
労働能力喪失率は9%とされています。
(第13級の後遺障害に関しては、第13級の後遺障害もご参照ください。)
後遺障害14級の場合
労働能力喪失率は5%とされています。
(第14級の後遺障害に関しては、第14級の後遺障害もご参照ください。)
就労可能年数
原則として67歳までの年数です。
ただし、67歳を超える方については、平均余命の2分の1、67歳までの年数が平均余命の2分の1より短い方については平均余命の2分の1となります。
ライプニッツ係数
逸失利益は、事故がなければ毎月あるいは毎年受け取ることができた収入を、現時点で一時金として受け取るものです。そのため、仮に67歳までの年数分の収入を現時点で受け取るとすると、67歳までの間その金額が運用可能となり、その利息分を多く得ることになります。よって、受け取ることのできる金額から、この67歳までの利息分を控除することが必要になります。
この将来分の利息を控除することを中間利息控除といいます。
中間利息控除の計算は、一般的にはライプニッツ方式という方法で行われており、ライプニッツ係数という数値を用いて計算します。
ここでは、交通事故で後遺症が残ってしまった場合に加害者に請求することが可能な後遺症による逸失利益についてご説明させていただきました。後遺症による逸失利益について、詳しくは当事務所までご連絡ください。
なお、交通事故全般については、仙台の弁護士による交通事故のご相談もご覧ください。