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【労災・過労死・過労自死】【判例・裁判例】被害者に後遺障害が残った場合の年金給付との損益相殺的調整

 
Xは、通勤途上、Yが運転する自動車に衝突されるという交通事故に遭い、右大腿骨骨折等の傷害を負いました。
Xには後遺障害が残ってしまたため、労災保険法に基づく障害年金、国民年金法に基づく障害基礎年金、厚生年金保険法に基づく障害厚生年金の支給を受け、又はその支給を受けることが確定しました。
XはYが加入していた任意保険から保険金の支払いも受けましたが、Yに対して、これらによって填補されない損害賠償の支払いを求める裁判を起こしたところ、①被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときに、これらの各社会保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害、②被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害をてん補するために労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ、又は支給されることが確定したときに、損益相殺的な調整に当たって、損害がてん補されたと評価すべき時期が問題となりました。

これについて、裁判所は、①被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときは、これらの各社会保険給付については、これらによるてん補の対象となる特定の損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有する損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきである、②被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害をてん補するために労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ、又は支給されることが確定したときには、それぞれの制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、てん補の対象となる損害は、不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整を行うべきである旨判断しました。

(最高裁判所平成22年9月13日第1小法廷判決)

労災・過労死・過労自死に関して、 被害者に後遺障害が残った場合の年金給付との損益相殺的調整についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労災・過労死・過労自死については、仙台の法律事務所による労災・過労死・過労自死のご相談もご覧ください。