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【労災・過労死・過労自死】【判例・裁判例】労災保険法による療養補償給付を受ける労働者につき使用者が労基法81条所定の打切補償の支払をすることにより同法19条1項ただし書の適用を受けることの可否

 
Xは、平成9年4月にYとの間で労働契約を締結してYにおいて勤務していましたが、平成14年3月ころから肩凝り等の症状を訴えるようになり、平成15年3月、頸肩腕症候群にり患しているとの診断を受けました。Xは、平成15年4月以降、頸肩腕症候群が原因で欠勤を繰り返し、平成18年1月から長期にわたり欠勤するようになりました。
平成19年11月、中央労働基準監督署長は、平成15年3月の時点で頸肩腕症候群は業務上の疾病に当たるものと認定し、Xに対し、療養補償給付及び休業補償給付を支給する旨の決定をしました。これを受けて、Yは、平成15年6月以降のXの欠勤について、Yの勤務員災害補償規程所定の業務災害による欠勤に当たるものと認定しました。
Xは、平成21年1月、平成18年1月以降の欠勤が3年を経過しましたが、頸肩腕症候群の症状にはほとんど変化がなく、就労できない状態が続いていたことから、Yは、勤務員災害補償規程に基づき、Xを平成21年1月から2年間の休職としました。
平成23年1月に上記の休職期間が経過しましたが、Xは、Yからの復職の求めに応じず、Yに対し職場復帰の訓練を要求しました。これを受けて、Yは、Xが職場復帰をすることができないことは明らかであるとして、平成23年10月24日、Yの勤務員災害補償規程所定の打切補償金として平均賃金の1200日分相当額である1629万3996円を支払った上で、同月31日付けでXを解雇する旨の意思表示をしました。
Xがこれに応じなかったため、YはXに対して地位不存在確認を求める裁判を起こしましたところ、XがYに対して地位確認等の反訴を起こしました(Yは本訴を取り下げました)。その裁判の中で、解雇の有効性、具体的には、打切補償制度に関する労働基準法81条は「第75条の規定によって補償を受ける労働者」と規定しているものの、本件では同法75条1項の療養補償ではなく労災保険法上の療養補償給付が支給されているため、このような労働者が労基法81条所定の「労働者」に該当し、同法19条1項ただし書の適用を受けることができるかが問題になりました。

これについて、裁判所は、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には、使用者は、当該労働者につき、労働基準法81条の規定による打切補償の支払をすることにより、解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができる旨判断しました。

(最高裁判所平成27年6月8日第二小法廷判決)

労災・過労死・過労自死に関して、労災保険法による療養補償給付を受ける労働者につき使用者が労基法81条所定の打切補償の支払をすることにより同法19条1項ただし書の適用を受けることの可否についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労災・過労死・過労自死については、仙台の法律事務所による労災・過労死・過労自死のご相談もご覧ください。