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【遺言】【判例・裁判例】印影のない遺言書への押印行為と相続欠格

 
A死亡の翌日ころ、Aの遺言公正証書を入れた封筒の中にこれを訂正する趣旨のA自筆の遺言証書があるのを妻X1が発見しましたが、自筆証書遺言にはA名下に押印がなく、訂正印、契印もありませんでした。
X1は、この自筆遺言証書がAの先妻の子Bの夫とX1、X2、Yらとの間の訴訟にとってX1ら側に有利なものと考え、必要箇所にAの印を押して方式を備えた遺言書の外形を整え、検認手続をすませました。
ところが、同遺言書は、Yとの関係ではX1、X2に不利益なため、X1、X2はYに対し、押印のなかったことを理由に同自筆遺言書の無効確認の訴えを起こしたところ、Aの遺言に押印したX1は相続欠格者にあたり、遺言の無効を主張する原告適格がないとの反論があったため、印影のない遺言書への押印行為が民法891条5号の偽造・変造にあたり、押印をした者が相続欠格者になるかが問題になりました。

これについて、裁判所は、相続に関する被相続人の遺言書又はこれについてされている訂正が方式を欠き無効である場合に、相続人が右方式を具備させて有効な遺言書又はその訂正としての外形を作出する行為は、民法891条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるが、その趣旨が遺言者の意思を実現させるためにその法形式を整えたにすぎないものであるときは、右相続人は同号所定の相続欠格者にあたらない旨判断しました。

(最高裁判所昭和56年4月3日第二小法廷判決)

遺言に関して、印影のない遺言書への押印行為と相続欠格についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

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