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危急時遺言の方式

遺言の判例
最高裁判所第二小法廷 昭和47年3月17日判決

事案の概要

かねてより病院に入院していたAは、自分の死期が迫ったと自覚し、友人B、C、Dを病室に招いて遺言をしました。遺言の趣旨の口授は、昭和43年1月27日深夜から翌28日午前零時すぎまで約30分にわたりなされ、B、C、D立ち合いの下にBが筆記してメモを作成しました。Bは同メモを自宅に持ち帰り、28日午前中に清書を終え、署名捺印をしました。
同日夕方に、C、Dも署名を終えましたが、印鑑を持っていなかったため捺印をしないまま、B、C、Dは同日午後9時ころ再びAの病室を訪れ、Dが清書された遺言の内容を朗読してAに読み聞かせ、Aの確認を得ました。
翌29日午前中に、B、C、Dは遺言執行者に指定されたY弁護士の事務所に行き、そこでC、Dも捺印を終えました。その際、遺言書に「遺産します」とあるのを「遺言します」と訂正し、「(但し遺言者は重篤の為め署名捺印はできない)」とのカッコ内但書を加え、それぞれに各証人の訂正印を捺印し、上覧に21字加入の記載ならびに各証人の訂正印を捺印しましたが、訂正部分を改めてAに読み聞かせることはしませんでした。また、遺言書の末尾には、作成日付として「昭和43年1月28日午前零時15分」との記載がなされていました。
1週間後にAが死亡したため、Bは家庭裁判所に確認の請求をし、確認の審判を得ました。
このような状況下で、相続人の1人であるXがYに対して遺言無効確認の裁判を起こしました。

争点

1 いわゆる危急時遺言の遺言書における日附と遺言の効力
2 いわゆる危急時遺言の遺言書に対する証人の署名捺印が遺言者の面前でなされなかった場合に遺言の効力が認められるか

裁判所の判断の要旨

1 いわゆる危急時遺言の遺言書に遺言をした日附ないしその証書の作成日附を記載することは遺言の有効要件ではなく、遺言書に作成の日として記載された日附が正確性を欠いていても、遺言は無効ではない。
2 いわゆる危急時遺言において、筆記者である証人が筆記内容を清書した書面に遺言者の現在しない場所で署名捺印をし、他の証人二名の署名を得たうえ、全証人の立会いのもとに遺言者に読み聞かせ、その後、遺言者の現在しない、遺言執行者に指定された者の法律事務所で右証人二名が捺印をし、もって全証人の署名捺印が完成した場合であっても、その署名捺印が、筆記内容に変改を加えた疑いを挾む余地のない事情のもとに遺言書作成の一連の過程に従って遅滞なくなされたものであるときは、その署名捺印は民法976条の方式に則ったものとして、遺言の効力を認めるに妨げない。

遺言に関して、危急時遺言の方式についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、遺言については、仙台の法律事務所による遺言のご相談もご覧ください。