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労働者の賃金債権に対し不法行為を原因とする債権をもってする相殺の許否

労働問題の判例
最高裁判所第大法廷 昭和36年5月31日判決

事案の概要

昭和28年4月、Xは、給料月額1万0500円の約定で、出資金の受入及び金銭の貸付等を業とするA社に雇われ、同社B出張所長として勤務しましたが、昭和29年3月末日、右出張所閉鎖に伴い退職しました。
A社は、昭和28年12月分から昭和29年3月分までのXの給料合計4万2000円を支払っていませんでした。
A社は、昭和29年7月16日、東京地方裁判所において破産宣告を受け、Yが破産管財人に選任されました。
Xは、東京地方裁判所に対し、Xの前記給料債権を破産債権として届け出たところ、昭和30年7月15日の債権調査期日において、Yは同債権につき異議を述べました。
そのため、Xは、右債権の確定を求めるための裁判を起こしたところ、Yは、XがA社のために保管していた24万円を、A社から投資家に返済する権限を与えられておらず、投資金の返済を禁止されていたにも関わらず投資家への返済にあてるという背任行為をし、A社は24万円の損害を被ったとして、A社の損害賠償請求権とXの未払い賃金債権を対当額で相殺する旨の主張をしました。

争点

労働者の賃金債権に対し不法行為を原因とする債権をもってする相殺の許否

裁判所の判断の要旨

労働者の賃金債権に対しては、使用者は、労働者に対して有する不法行為を原因とする債権をもっても相殺することは許されない。

労働問題に関して、労働者の賃金債権に対し不法行為を原因とする債権をもってする相殺の許否についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労働問題については、仙台の法律事務所による労働問題のご相談もご覧ください。