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【賃金・残業代・退職金】【判例・裁判例】固定残業制の有効性4

 
Xは、平成24年4月、医療法人であるYとの間で、雇用契約を締結しました。当該雇用契約に係る契約書には、①年俸を1700万円とし、年俸は、本給(月額86万円)、諸手当(月額合計34万1000円。ただし同月分のみ初月調整8000円を加算)及び賞与により構成されること、②時間外勤務に対する給与は、Yの医師時間外勤務給与規程の定めによること等の定めがありました。そして、医師時間外勤務給与規程は、時間外手当の対象を原則として病院収入に直接貢献する業務又は必要不可欠な緊急業務に限ること、通常業務の延長とみなされる業務は時間外手当の対象とならないこと等を定めていました。
XとYの間の雇用契約においては、医師時間外勤務給与規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金は年俸1700万円に含まれることが合意されていたものの、上記年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていませんでした。
上記のような雇用契約に基づき、Xは、平成24年4月から同年9月までの間、Yの運営する病院の医師として勤務し、その間、当直を13回行いました。
Yは、Xに対し、医師時間外勤務給与規程に基づいて時間外手当を支払いましたが、Xは、Yに対し、医師時間外勤務給与規定以上の時間外手当の支払いを求める裁判を起こしたところ、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていた場合、当該年俸の支払により時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができるかが問題になりました。

これについて、裁判所は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても、当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないという事情の下では、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできない旨判断しました。

(最高裁判所平成29年7月7日第二小法廷判決)

賃金・残業代・退職金の問題に関して、固定残業制の有効性についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、残業代については、仙台の法律事務所による残業代請求のご相談もご覧ください。