【賃金・残業代・退職金】【判例・裁判例】固定残業制の有効性2
Xらは、Y社に雇用されてタクシー運転手として働いていました。
Xらの勤務体制は、隔日勤務で、所定労働時間が午前8時から翌日午前2時まで、このうち2時間が休憩時間でした。Xらの賃金は、月間水揚高に一定率の歩合を乗じて得た金額を翌月5日に支払うというもので、歩合の率は、勤務歴によって異なりますが、最高で46パーセント、最低で42パーセントでした。
そして、Xらが時間外又は深夜の労働を行った場合にも、これ以外の賃金は支給されておらず、右の歩合給のうちで通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできませんでした。
このような状況下で、Xらは、Y社に対し、午前2時以降の時間外労働、午後10時から午前5時までの深夜労働に対する残業代(割増賃金)及び労働基準法違反による付加金の支払いを求めて裁判を起こしたところ、Y社は、歩合給には時間外及び深夜の割増賃金に当たる分も含まれているから、Xらの請求する割増賃金は既に支払済みであると主張したため、そのような処理の有効性が問題になりました。
これについて、裁判所は、タクシー運転手に対する賃金が月間水揚高に一定の歩合を乗じて支払われている場合に、時間外及び深夜の労働を行った場合にもその額が増額されることがなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないときは、右歩合給の支給によって労働基準法(平成5年法律第79号による改正前のもの)37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることはできない旨判断しました。
(最高裁判所平成6年6月13日第二小法廷判決)
賃金・残業代・退職金の問題に関して、固定残業制の有効性についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
なお、残業代については、仙台の弁護士による残業代請求のご相談もご覧ください。