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【労働問題】【判例・裁判例】転勤命令が権利濫用に当たる場合

 
X は、昭和40年4月にY社に入社しました。Xの入社後の希望勤務地は大阪であり、希望通り入社後の最初の勤務地は大阪になりました。
Xは、昭和46年7月日、大阪以外の神戸営業所に転勤しましたが、特に異議を述べませんでした。
Y社は、昭和48年9月、Xを広島営業所に配転させる転勤を内示しましたが、Xは家庭の事情を理由に転居を伴う転勤には応じられないとして拒否しました。その後、Y社は昭和48年10月30日付でXを神戸営業所から名古屋営業所へ転勤させる命令を出しました(本件転勤命令)が、Xはまたこれを拒否しました。
そのため、Y社は、昭和49年1月、Y社就業規則「職務上の指示命令に不当に反抗し又は職場の秩序を乱したり、若しくは乱そうとしたとき」に該当するとしてXを懲戒解雇しました。なお、同就業規則には「業務上の都合により社員に異動を命ずることがある。この場合には正当な理由なしに拒むことは出来ない。」と定められていました。
Xは本件転勤命令および同命令拒否を理由にした懲戒解雇は無効であるとして、Y社に対して従業員としての地位確認および未払賃金の支払を求める裁判を起こしたところ、本件転勤命令が権利の濫用にあたるかが問題になりました。

これについて、裁判所は、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきであり、業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである旨判断しました。

(最高裁判所昭和61年7月14日第二小法廷判決)

労働問題に関して、転勤命令が権利濫用に当たる場合についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

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