【労働問題】【判例・裁判例】競業避止特約の有効性
X社は、研究部に属して重要技術に関与していたYらの在職中に、Yらとの間で、雇用契約終了後2年間はX社と競業関係にある一切の企業に関与しないこと等を内容とする契約を締結するとともに、Yらに対して秘密保持手当を支給していました。しかし、Yらは、X社を退職後に同業のA社の取締役に就任し、A社はX社の製品と同様の製品を製造してX社の取引先等に販売しました。
そのため、X社がYらに対して前記契約に基づいて競業行為の差し止めを求めたところ、Yらの競業を禁止した契約の有効性が問題になりました。
これについて、裁判所は、使用者の技術的秘密を保護するために使用者の営業の秘密を知り得る立場にある者に秘密保持義務を負わせ、秘密保持義務を実質的に担保するために退職後における一定期間、競業避止義務を負わせることは適法・有効と解すると判断した上、競業の制限が合理的範囲を超え、被用者の職業選択の自由等を不当に抱束し、同人の生存を脅やかす場合には、その制限は公序良俗に反し無効となることは言うまでもないが、この合理的範囲を確定するにあたっては、制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、使用者の利益(企業秘密の保護)、被用者の不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中の虞れ、それに伴う一般消費者の利害)の3つの視点に立って慎重に検討していくことを要するところ、本件契約は制限期間は2年間という比較的短期間であり、制限の対象職種はX社の営業目的である金属鋳造用副資材の製造販売と競業関係にある企業というのであって、X社の営業が化学金属工業の特殊な分野であることを考えると制限の対象は比較的に狭いこと、場所的には無制限であるが、これはX社の営業の秘密が技術的秘密である以上はやむをえないと考えられ、退職後の制限に対する代償は支給されていないが、在職中、機密保持手当がYらに支給されていたこと既に判示したとおりであり、これらの事情を総合するときは、本件契約の競業の制限は合理的な範囲を超えているとは言い難く、本件契約はいまだ無効と言うことはできない旨判断しました。
(奈良地方裁判所昭和45年10月23日判決)
労働問題に関して、競業避止特約の有効性についての奈良地方裁判所の裁判例を紹介させていただきました。
なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。