【労働問題】【判例・裁判例】国の安全配慮義務2
自衛隊の会計隊長Aは、同隊のジープを運転し、隊員輸送任務を終えました。その帰途、Aは、極めて滑りやすい道路状況を看過し、急に加速するなど運転を誤り、ジープを反対車線に進入させ、対向車に衝突してしまいました。その事故により、Aが職務上同乗を命じていたBが死亡してしまいました。
そのため、Bの遺族であるXが国に対し、Aを履行補助者とする国の安全配慮義務違反を理由に国に対して損害賠償を求める裁判を起こしたところ、自衛隊の自動車の運転者が運転上の注意義務を怠ったことにより同乗者が死亡する事故が起きた場合に国に右同乗者に対する安全配慮義務違反があるといえるかが問題になりました。
これについて、裁判所は、自衛隊の会計隊長が、同隊の自動車を運転し、隊員輸送の任務を終了した帰途、路面が雨で漏れ、かつ、アスファルトが付着して極めて滑走し易い状況にあることを看過し、急に加速した等運転者として道路交通法上当然に負うべき通常の注意義務を怠ったことにより右自動車を反対車線に進入させて対向車に衝突させ、その衝撃によって右自衛隊の自動車に同乗を命ぜられた者を死亡させたとしても、それだけでは国に右同乗者に対する安全配慮義務違反があるとはいえない旨判断しました。
(最高裁判所昭和58年5月27日第二小法廷判決)
労働問題に関して、国の安全配慮義務についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。