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【労働問題】【判例・裁判例】元従業員への留学費用の返還請求が認められた事例

 
Yは、X社で働いていましたが、社員留学制度により、留学に伴う費用はX社の負担でアメリカに留学することになりました。Yは、留学に先立ち、帰国後一定期間を経ずに特別な理由なく退職することとなった場合、X社が留学に際し支払った一切の費用を返却する旨の誓約書をX社に差し入れていました。
Yは、2年の留学を終えて帰国後、Y社に復帰しましたが、2年5か月で退社しました。
そのため、X社が、Yに対して、留学費用の内の学費相当額の返還を請求したところ、X社・Y間で留学費用についての消費貸借契約が成立しているか、成立しているとすればその契約は労働基準法16条に違反するかが問題になりました。

これについて、裁判所は、前者については、応募が社員の自由意思によるもので業務命令に基づくものではないこと、留学経験や留学先での学位取得は担当業務に直接役立つものではない一方、留学社員にとっては有益な経験、資格となること等から、本件留学制度は業務ではなく、その費用をどちらが負担するかについては、労働契約とは別に当事者間の契約によって定めることができると判断し、誓約書を提出して、口座振り込みで留学費用の交付を受けたことが認められるから、少なくとも学費については、一定期間当該会社に勤務した場合に返還義務を免除する旨の特約付きの金銭消費貸借契約が成立していると解するのが相当である旨判断し、後者の点については、留学費用返還債務が労働契約の不履行により生じるものではなく、労働基準法16条が禁止する違約金の定め、損害賠償額の予定には該当せず、同条には違反しない旨判断しました。

(東京地方裁判所平成9年5月26日判決)

労働問題に関して、元従業員への留学費用の返還請求が認められた事例についての東京地方裁判所の裁判例を紹介させていただきました。

なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。