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【労働問題】【判例・裁判例】偽装請負の場合に注文者と労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたといえるか

 
プラズマディスプレイパネルの製造を業とするY社の製造ラインでは、Y社の正規従業員と、Y社から業務委託を受けたP社等に雇用されていた者とが共同で作業に従事していました。P社とY社との間の業務委託基本契約によれば、Y社は生産1台につき定められた業務委託料をP社に支払い、P社がその従業員を作業に従事させるなどとされていました。
Xは、平成16年1月、P社との間で、契約期間を2か月・更新有りなどとする雇用契約を締結しました。Xは、Y社の工場で封着工程に従事し、平成17年7月20日までP社から給与等を支給されていました。Xは、作業についてY社の従業員から直接指示を受け、P社の正社員による指示は受けていませんでした。
平成17年5月、Xの加入した地域労働組合は、XがY社を派遣先とする派遣労働者として1年を超えて製造ラインの業務に従事しており、Y社に労働者派遣法40条の4に基づく直接雇用の申込み義務が発生していると主張しました。さらに、Xが、大阪労働局に対し、Y社の工場における勤務実態は偽装請負であり、職業安定法44条等に違反する旨申告したところ、同局は、Y社に対する調査を行い、同年7月、P社との業務委託契約は労働者派遣契約に該当し、労働者派遣法24条の2、同法26条に違反すると認定して、上記契約を解消して労働者派遣契約に切り替えるようにとの是正指導を行いました。
Xは、P社から別の部門に移るよう打診されましたが、Y社の直接雇用下で従来の作業を続けたいと考え、平成17年7月20日限りでP社を退職しました。Xは、Y社に対しXを直接雇用するよう求めたところ、Y社は、同年8月2日、Xとの雇用契約の条件として、契約期間を同月から平成18年1月31日まで(原則として契約更新なし)、業務内容を「プラズマディスプレイパネル製造―リペア作業及び準備作業などの諸業務」と記載した労働条件通知書をXに交付しました。Xは、XがP社との契約関係を解消して収入のない状況であり、従前の交渉の経緯からもこのままではYとの雇用契約の締結が困難であると考え、Y社に対し内容証明郵便で契約期間及び業務内容について異議をとどめた上で、Y社が準備した雇用契約書に署名押印し、平成17年8月22日から業務に従事しましたが、その内容は専ら個室で行うリペア作業でした。しかも、Y社は、同年12月28日、平成18年1月31日をもって上記雇用契約が終了する旨を通告し、その翌日以降、Xの就業を拒否しました。
そのため、XがY社に対し、雇用契約上の権利を有することの確認等を求める裁判を起こしたところ、請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために、請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり、上記の派遣を違法な労働者派遣と解すべき場合に、注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたといえるかが問題になりました。

これについて、裁判所は、請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために、請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり、上記の派遣を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」に違反する労働者派遣と解すべき場合において、①上記雇用契約を無効と解すべき特段の事情がないこと、②注文者が請負人による当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと、③当該労働者が請負人から支給を受けていた給与等の額を注文者が事実上決定していたといえるような事情はうかがわれないこと、④請負人が配置を含む当該労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったことなど判示の事情の下では、注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえない旨判断しました。

(最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決)

労働問題に関して、偽装請負の場合に注文者と労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたといえるかについての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

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