【労働問題】【判例・裁判例】使用者の行う企業秩序違反事件の調査と労働者の協力義務
Xは、Y社に勤務していました。
Y社の従業員であるAは、社内で従業員を対象として、原水爆禁止の署名集め及び活資金調達の運動を行いましたが、Xに対しても、資金調達のための販売用ハンカチの作成を依頼しました。
Y社は、Aのかかる活動を知り、事情聴取に及び、AのXへの依頼のほか、Xも他の従業員に対してハンカチの作成を依頼したことをも知るに至り、Xからも事情を聴くことになりました。
Xは、Y社の人事課長らの質問に対し、自分がハンカチを作成したことがあること、Aに依頼されたことなどは認めましたが、企業内原水禁実行委員会とはどういうものかなどの問や、そのメンバー、資金カンパと署名の集計状況などの質問に対しては、沈黙するか、「分かりません」。「どうしてそういうことを聞くのですか」、「答える必要がありません」などと応答しました。
Y社は、Xのそのような態度は、就業規則に違反するとしてXを譴責処分にしました。Xは、Y社内の苦情処理委員会に苦情申立てをしましたが、棄却されたため、それを不服として、処分の付着しない労働契約上の権利の存在の確認を求める裁判を起こしたところ、使用者の行う企業秩序違反事件の調査に対する労働者の協力義務の有無が問題になりました。
これについて、裁判所は、労働者は、使用者の行う他の労働者の企業秩序違反事件の調査について、これに協力することが、その職責に照らし職務内容となっていると認められる場合、又は調査対象である違反行為の性質・内容、右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められる場合でない限り、協力義務を負わない旨判断しました。
(最高裁判所昭和52年12月13日第三小法廷判決)
労働問題に関して、使用者の行う企業秩序違反事件の調査と労働者の協力義務についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。