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【労働問題】【判例・裁判例】住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者の労働組合法上の労働者性

 
X社は、親会社であるA社の製造した住宅設備機器の修理補修等を主たる事業とする株式会社です。X社の従業員約200名のうち修理補修等に従事する可能性があるのは30名未満で、修理補修業務の大部分は約590名いるカスタマーエンジニア(CE)によって行われていました。
X社は、CEとの間で1年ごとに更新される業務委託契約を締結し、製品全般の修理点検等をCEに委託していましたが、業務委託手数料は、X社が毎年行うCEの評価に応じて上下し、休日や委託時間帯以外の時間に業務を委託する場合には割増分が支払われていました。また、CEの担当地域を決定していたのはX社であり、CEの業務日についても、X社が各CEと調整した上で指定していました。X社は、顧客からの修理補修等の発注を各CEに割り振り、割り振られたCEはこれを拒否することもできましたが、その割合は1%弱でした。
CEは、顧客と連絡を取って修理補修等の日時を調整し、A社の子会社による作業であることを示すため、X社の制服を着用し、その名刺を携行して業務に従事し、業務終了後はサービス報告書をX社に送付していました。
このような状況で、X社が、CEが加入した労働組合であるBらから団体交渉の申入れを受けた際、CEはX社の労働者に当たらないとして上記申入れを拒絶したところ、Bらの申立てを受けた労働委員会から団交拒否は不当労働行為に当たるとされ、中央労働委員会に対する再審査申立ても棄却されました。そのため、X社が、再審査棄却命令の取消しを求める裁判を起こしたところ、住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者が、上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たるが問題になりました。

これについて、裁判所は、住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は、次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では、上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる旨判断しました。
(1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は、能力、実績、経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で管理され全国の担当地域に配置された上記受託者によって担われており、その業務日及び休日も上記会社が指定していた。
(2) 業務委託契約の内容は上記会社が定めており、上記会社による個別の修理補修等の依頼の内容を上記受託者の側で変更する余地はなかった。
(3) 上記受託者の報酬は、上記会社による個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に、上記会社があらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に上記会社が当該受託者につき決定した級ごとの一定率を乗じ、これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていた。
(4) 上記受託者は、上記会社から修理補修等の依頼を受けた業務を直ちに遂行するものとされ、承諾拒否をする割合は僅少であり、業務委託契約の存続期間は1年間で上記会社に異議があれば更新されないものとされていた。
(5) 上記受託者は、上記会社が指定した担当地域内においてその依頼に係る顧客先で修理補修等の業務を行い、原則として業務日の午前8時半から午後7時まで上記会社から発注連絡を受け、業務の際に上記会社の制服を着用してその名刺を携行し、業務終了時に報告書を上記会社に送付するものとされ、作業手順等が記載された各種マニュアルに基づく業務の遂行を求められていた。

(最高裁判所平成23年4月12日第三小法廷判決)

労働問題に関して、住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者の労働組合法上の労働者性についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。