【労働問題】【判例・裁判例】タクシー会社におけるストライキに際し営業用自動車の運行阻止の行為が正当な争議行為に当たらないとされた事例
X社は旅客運送会社で、従業員115名を雇用し常時42台のタクシーを稼働させていました。Y1~Y6は、タクシー労働者の労働組合である全自交A地本ないし同地本X分会の執行委員長などの役職にありました。
A地本は昭和57年の春闘において、X社に対し基本給の引上げ、臨時給の支給、歩合給のみの臨時従業員の正社員化などを要求して団体交渉を重ねましたが、X社の拒否により決裂しました。
そこで、A地本は、同年7月9日の始業時から48時間のストライキを実施しました。その際にY1らは、組合員が乗務することになっていた6台のタクシーをXが稼働させるのを阻止するため、X社の2か所の車庫において、組合員ら10~15名とともにタクシーの傍らに座り込んだり寝転んだりして両車庫を占拠しました。X社は文書で退去を命じ、その専務らが何度か口頭で本件タクシーの搬出を申し入れましたが、組合員らは応じませんでした。
そのため、X社は、タクシー6台を2日にわたり稼働不可能にして営業を妨害したとして、Y1~Y6に対し不法行為を理由に損害賠償を求める裁判を起こしたところ、 タクシー会社におけるストライキに際し労働組合員が行った営業用自動車の運行阻止の行為が正当な争議行為に当たるかが問題になりました。
これについて、裁判所は、 タクシー会社におけるストライキに際し、労働組合員が、車庫に格納された営業用自動車の傍らに座り込むなどして、会社の退去要求に応ぜず、会社は右自動車を車庫から搬出することができなかったなど判示の事実関係の下においては、労働組合員の右行為は、争議行為として正当な範囲にとどまるものとはいえない旨判断しました。
(最高裁判所平成4年10月2日第二小法廷判決)
労働問題に関して、タクシー会社におけるストライキに際し営業用自動車の運行阻止の行為が正当な争議行為に当たらないとされた事例についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。