【パワハラ・セクハラ】【判例・裁判例】肉体関係を迫ったり性的な虚偽の風評を流布したりする行為が違法と判断されたセクハラ事例
Y1社の専務取締役営業部長であったY3は、平成11年3月ころから、岡山支店長を務めていたX1に対し、異性関係を問いただしたり、後継者の地位をちらつかせ、肉体関係を迫る等していました。また高松支店長と徳島支店長を兼務し、X1と親しくし、Y3の行為に関する相談を受ける等していたX2に対しては、Y3は、X1と肉体関係を持てるよう協力するよう要請していました。しかし、X1、2ともにこれを拒否し、同年4月5日、従業員数名で、代表取締役であるY2に対し、Y3の行為を訴えました。なおY2は、かねてから度々、X1に対し、再婚しないのか、X2に対し、子どもはまだか等の言動を行っていました。
同月7日に役員会議が開かれ、X1、2に対して事情聴取が行われたものの、Y3のセクハラ行為は確認できないと結論されました。また、X1、2は、組織ルールを逸脱した行動により社内を混乱させたとして、支店長職を解任されて一般社員に降格となり、減給されました。Y3もX1、2への不適切な対応で騒動を惹起したとして、専務職を解任されましたが、実際の業務は従前と変わりませんでした。
この処分の後、Y3は、自らのセクハラ行為は否定して、X1、2は淫乱である等と従業員に言い回るようになりました。さらに、同年5月2日には、X1、2はさらに減給を受けました。また、X1、2は、仕事を事実上取り上げられてしまうようになり、しかも同年10月13日には給与が全く入金されなくなりました。
そのため、X1、2は、セクハラ問題に解決の見込みはなく、他の従業員と円満に仕事することも不可能になったと判断し、同日、退職届を提出し、Y1社を退職しました。
そして、X1、2は、Y3のセクハラ行為、Y2の性的嫌がらせが不法行為に当たる等と主張し、Y1~3に対して慰謝料や退職後1年分の逸失利益等の損害賠償を請求する裁判を起こしたところ、Y1~3に不法行為が成立するかが問題になりました。
これについて、裁判所は、Y3がX1に対して肉体関係を迫り、X1、2について性的な虚偽の風評の流布等をした行為は、上司としての立場を利用して行われ、両名を退職に追い込むほどに職場環境を悪化させたもので、不法行為に当たる、Y2のX1、2に対する再婚をしないのか、子どもはまだか等の言動は、不快感を持つものであるとしても、違法行為とは解せない、Y1社の責任については、Y3の行為は、会社の内部で、会社の役員としての立場を利用してなされたものであり、Y2の一部行為は業務の執行中になされたものであり、Y1社は使用者責任を負い、X1、2に対して行われた降格・減給処分は就業規則上の根拠がなく、かつ、減給の程度が労基法に違反すること、Y3の行為・言動を放置し、職場環境の悪化を放置したこと等に違法性ないし過失があるとして、Y1社の不法行為責任を認める旨判断しました。
(岡山地方裁判所平成14年5月15日判決)
パワハラ・セクハラに関して、肉体関係を迫ったり性的な虚偽の風評を流布したりする行為が違法と判断されたセクハラ事例についての岡山地方裁判所の裁判例を紹介させていただきました。
なお、パワハラ・セクハラについては、仙台の法律事務所によるパワハラ・セクハラのご相談もご覧ください。