【パワハラ・セクハラ】【判例・裁判例】異性関係に関する噂を流すなどの行為が違法と判断されたセクハラ事例
Xは、Y1社で働いていましたが、Xの上司であるY2は、Y1社のアルバイト学生等に対し、Xの異性との交遊関係が派手であるといった、Xの社会的評価にとっては不利益な発言を繰り返すほか、Y1社の専務に対し、Y1社の取引の1つが途絶えたのはXがその取引先の担当者と結んでいた男女関係のもつれが原因であるといった報告を、事実関係を充分確認することなく行ったりしました。このような中で、XとY2との関係は悪化していき、Y2は、予め専務にも相談の上、Xに対し、Xと取引先の男性との関係に問題が見られるといった指摘をして、Xに退職するよう求めました。
Xは、Y2の発言を不服とし、専務らに対してY2に謝罪させるよう求めたりしましたが、専務らは、XとY2とでよく話し合うようにとの対応を行ったのみで、XとY2との関係はさらに悪化しました。そして、最終的に、XがY1社を退社しました。
このような状況下で、XがY1、Y2に対して損害賠償請求をしたところ、Y2が不法行為責任を負うか、Y1が使用者責任を負うかが問題になりました。
これについて、裁判所は、Y2については、Y1社内外の関係者に対し、Xの異性との交遊関係に関してそれが乱脈であるかのようにXの性向を非難する発言をしたり、個人名を挙げてXの異性との交遊関係に関する噂を流したりしてXの働く女性としての評価を下げさせ、Xをめぐる職場環境を悪化させて、最終的にはXがY1社から退職するという結果を生じさせたとして、民法709条に基づく不法行為責任を認め、Y1社については、使用者には、被用者の労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もあると解されるところ、被用者を選任監督する立場にある者が右注意義務を怠った場合には、右の立場にある者に被用者に対する不法行為が成立することがあり、使用者も民法715条により不法行為責任を負うことがある旨判断し、結論として、専務らには、早期に事実関係を確認する等して問題の性質に見合った適切な職場環境調整の方途を探り、退職という最悪の事態の発生を極力回避する方向で努力することに十分でないところがあったとして、使用者責任を認める判断をしました。
(福岡地方裁判所平成4年4月16日判決)
パワハラ・セクハラに関して、異性関係に関する噂を流すなどの行為が違法と判断されたセクハラ事例についての福岡地方裁判所の裁判例を紹介させていただきました。
なお、パワハラ・セクハラについては、仙台の弁護士によるパワハラ・セクハラのご相談もご覧ください。