オペラ公演を主催する財団法人との間で出演契約を締結した合唱団員の労働組合法上の労働者性
労働問題の判例
最高裁判所第三小法廷 平成23年4月12日判決
事案の概要
Aは、B組合に加入している者であり、X合唱団の契約メンバー(年間シーズンの全ての公演に出演することが可能なメンバー)として、過去4年間は毎年、X運営財団との間で期間を1年とする出演基本契約を締結していたました。
しかし、X運営財団は、平成15年2月、次期シーズンについてAを契約メンバーとしては不合格とし、このことに関するB組合からの団体交渉の申入れにも応じませんでした。
B組合は、労働委員会に対し、Aの不合格措置及び団交申入れに対するX運営財団の対応が不当労働行為に当たるとして、救済申立てをしたところ、労働委員会委は、団交申入れに対するX運営財団の対応は不当労働行為に該当するが不合格措置はこれに該当しないとして、X運営財団に対し団体交渉に応ずベきこと等を命じ、B組合のその余の申立てを棄却する旨の命令を発しました。
この命令に関し、X運営財団は救済を命じた部分につき、B組合は申立棄却部分につき、中央労働委員会に対しそれぞれ再審査を申し立てましたが、中労委は、各再審査申立てをいずれも棄却する旨の命令を発しました。
そのため、X運営財団が、中労委の命令に関し、再審査申立てを棄却した部分の取消しを求める裁判を起こしました。
争点
年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上、各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員が、上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たるか
裁判所の判断の要旨
年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上、各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は、次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では、上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たる。
(1) 出演基本契約は、上記法人が、試聴会の審査の結果一定水準以上の歌唱技能を有すると認めた者を、原則として契約期間の全ての公演に出演することが可能である合唱団員として確保することにより、上記各公演を円滑かつ確実に遂行することを目的として締結されていた。
(2) 合唱団員は、出演基本契約を締結する際、上記法人から、あらかじめ上記法人が指定する全ての公演に出演するために可能な限りの調整をすることを要望され、合唱団員が公演への出演を辞退した例は、出産、育児や他の公演への出演等を理由とする僅少なものにとどまっていた。
(3) 出演基本契約の内容や、契約期間の公演の件数、演目、各公演の日程及び上演回数、これに要する稽古の日程、その演目の合唱団の構成等は、上記法人が一方的に決定していた。
(4) 合唱団員は、各公演及びその稽古につき、上記法人の指定する日時、場所において、その指定する演目に応じて歌唱の労務を提供し、歌唱技能の提供の方法や提供すべき歌唱の内容について上記法人の選定する合唱指揮者等の指揮を受け、稽古への参加状況について上記法人の監督を受けていた。
(5) 合唱団員は、上記法人の指示に従って公演及び稽古に参加し歌唱の労務を提供した場合に、出演基本契約で定められた単価及び計算方法に基づいて算定された報酬の支払を受け、予定された時間を超えて稽古に参加した場合には超過時間により区分された超過稽古手当の支払を受けていた。
労働問題に関して、オペラ公演を主催する財団法人との間で出演契約を締結した合唱団員の労働組合法上の労働者性についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。