【相続】【判例・裁判例】相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄・隠匿行為と相続欠格事由
Aは、自身が会長的立場にあり、長男Y1が代表取締役を務めるB社の債務について、Y2社に賃貸中の甲土地をY2社に売却してその売却代金をもって債務の弁済に充てることとしました。そして、AとY2社との間で売買契約が成立し、代金全額がAに支払われました。また、Aは、かかる売買契約の趣旨を明らかにしておくために、「甲土地の売却代金はB社に寄付するから、Y1は債務の弁済に充てること、また他の兄弟もこれを承諾すること」という趣旨の自筆証書遺言を作成し、これをY1に預けていました。
その後、甲土地についての所有権移転登記手続が完了する前にAが死亡し、相続が開始しました。Aの相続人は、Y1、Y3~5、X1、X2の6名でした。
相続人間で話し合いが行われた際、Y1は、Aから預かっていた自筆証書遺言が所在不明になっていたためにそれを他の相続人に示すことはできませんでしたが、「Y2社に対して甲土地に関する所有権移転登記義務を履行するため、甲土地をY1が相続する。」という内容の遺産分割協議、「Aの遺産に属するその他の土地及び財産をY1が相続する。Y1はX1、X2に3500万円を、Y5に300万円を支払う。Y3、Y4は一切相続しない。」という内容の遺産分割協議が成立しました。
その後、X1、X2が、Y1が遺言書を破棄・隠匿した等を理由にY1、Y3~5に対してはY1の相続権不存在確認と遺産分割協議の無効確認を求め、Y2社に対しては所有権移転登記の抹消を求めて裁判を起こしたところ、相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄隠匿行為が民法891条5号所定の相続欠格者にあたるかが問題になりました。
これについて、裁判所は、相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者に当たらない旨判断しました。
(最高裁判所平成9年1月28日第三小法廷判決)
相続に関して、相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄・隠匿行為と相続欠格事由についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
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