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泥棒運転の場合の管理使用者の自動車保管上の過失の有無

交通事故の判例
最高裁判所第三小法廷 令和2年1月21日判決

事案の概要

Y社は、独身の従業員のための寮(以下「本件独身寮」といいます。)を有し、そこに居住する従業員がY社の事業所へ通勤するためのものとして、本件自動車を含む3台の自動車(以下「本件各自動車」といいます。)を用意していました。
本件各自動車は、普段、本件独身寮の敷地内にある駐車場(以下「本件駐車場」といいます。)に駐車されていました。本件駐車場の北側には本件独身寮の建物があり、東側及び西側には塀がありましたが、南側は公道に面しており、公道との間に塀や柵は設けられていませんでした。
Y社は、本件独身寮内の食堂に、本件各自動車のエンジンキーを掛けるためのフックを設け、従業員が本件各自動車を本件駐車場に駐車する際は、ドアを施錠した上で、エンジンキーを上記フックに掛けて保管する旨の決まり(以下「本件内規」といいます。)を定めていました。
Y社の従業員であるAは、平成29年1月17日午後5時頃、本件自動車を運転してY社の事業所から本件独身寮に帰った際、本件自動車を公道に後部を向ける形で本件駐車場に駐車し、エンジンキーを運転席上部の日よけに挟み、ドアを施錠しないまま外出しました。Aは、同日午後7時30分頃に本件独身寮に戻った際、本件自動車が本件駐車場に駐車されていることを確認したものの、エンジンキーを取り出さず、ドアを施錠しませんでした。
Aは、以前にも、ドアを施錠せず、エンジンキーを運転席上部の日よけに挟んだ状態で本件自動車を本件駐車場に駐車したことが何度かありました。
Bは、平成29年1月18日午前0時35分頃、窃取して乗り捨てるための自動車を探していたところ、無施錠の本件自動車を発見し、車内を物色してエンジンキーを見付け、本件自動車を窃取しました。
Bは、本件自動車の運転を続け、平成29年1月18日午前5時39分頃、道路の第一車線を走行中、居眠り運転により本件自動車を駐車車両に追突させた上、第二車線を走行していたX2所有の自動車に衝突させ、さらに、同自動車を第三車線を走行していたX1使用の自動車に衝突させる本件事故を起こしました。
このような状況で、X1、X2らがY社に対して交通事故にかかる損害賠償を求める裁判を起こしました。

争点

泥棒運転の場合の管理使用者の自動車保管上の過失の有無

裁判所の判断の要旨

Y社は、本件自動車を本件独身寮に居住する従業員の通勤のために使用させていたものであるが、第三者の自由な立入りが予定されていない本件独身寮内の食堂にエンジンキーを保管する場所を設けた上、従業員が本件自動車を本件駐車場に駐車する際はドアを施錠し、エンジンキーを上記の保管場所に保管する旨の本件内規を定めており、本件駐車場は第三者が公道から出入りすることが可能な状態であったものの、近隣において自動車窃盗が発生していたなどの事情も認められず、Y社は、本件内規を定めることにより、本件自動車が窃取されることを防止するための措置を講じていたといえる、Aは、以前にも、ドアを施錠せず、エンジンキーを運転席上部の日よけに挟んだ状態で本件自動車を本件駐車場に駐車したことが何度かあったものの、Y社がそのことを把握していたとの事情も認められないことから、本件事故について、Y社に自動車保管上の過失があるということはできない。

交通事故に関して、泥棒運転の場合の管理使用者の自動車保管上の過失の有無についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、交通事故については、仙台の弁護士による交通事故のご相談もご覧ください。