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共同不法行為における過失相殺と損害の一部填補が他の共同不法行為者に及ぼす影響

交通事故の判例
最高裁判所第三小法廷 平成11年1月29日判決

事案の概要

Y1が運転するY2所有の普通乗用自動車が第一車線から第二車線に進路変更しようとしたため、第二車線を進行していたA運転の普通乗用自動車(A車)はそれを避けようとして中央線を越えて対向車線に進入し、対向車線を走行してきた普通乗用自動車と正面衝突する交通事故を起こしました。
この事故で、A車に同乗していたBは死亡し、X1(AとBの母)は傷害を負いました。
Yらとの関係で、Bの損害については40%、X1の損害については35%の過失相殺が相当で、過失相殺後のBの損害額は3624万2755円、X1の損害額は37万4885円でした。
A車について締結されていた自賠責保険から、X1とX2(AとBの父)は、Bの損害の賠償として3000万円、X1は自己の損害の賠償として約29万2860円の支払いを受けました。
このような状況で、Xらが、Yらに対して損害賠償を請求する裁判を起こしました。

争点

1つの交通事故について甲(本件のA)及び乙(本件のYら)が連帯して損害賠償責任を負う場合に乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がされて両者の賠償すべき額が異なるときに甲のした損害の一部てん補が乙の賠償すべき額に及ぼす影響

裁判所の判断の要旨

甲及び乙が1つの交通事故によってその被害者丙に対して連帯して損害賠償責任を負う場合において、乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がされ、甲及び乙が賠償すべき損害額が異なることになることがある。この場合、甲が損害の一部をてん補したときに、そのてん補された額を乙が賠償すべき損害額から控除することができるとすると、次のような不合理な結果が生ずる。すなわち、乙は、自己の責任を果たしていないにもかかわらず右控除額だけ責任を免れることになるのに、甲が無資力のためにその余の賠償をすることができない場合には、乙が右控除後の額について賠償をしたとしても、丙はてん補を受けるべき損害の全額のてん補を受けることができないことになる。また、前記の設例において、甲及び乙が共に自賠責保険の被保険者である場合を考えると、甲の自賠責保険に基づき損害の一部がてん補された場合に右損害てん補額を乙が賠償すべき損害額から控除すると、乙の自賠責保険に基づきてん補されるべき金額はそれだけ減少することになる。その結果、本来は甲、乙の自賠責保険金額の合計額の限度で被害者の損害全部をてん補することが可能な事故の場合であっても、自賠責保険金による損害のてん補が不可能な事態が生じ得る。以上の不合理な結果は、民法の定める不法行為法における公平の理念に反するといわざるを得ない。
したがって、甲がしたてん補の額は丙がてん補を受けるべき損害額から控除すべきであって、控除後の残損害額が乙が賠償すべき損害額を下回ることにならない限り、乙が賠償すべき損害額に影響しないものと解するのが相当である。
本件事故は、Y1及びAの過失により発生したものであり、Bがてん補を受けるべき損害は、Bの過失を考慮すると、約5738万4362円であるところ、Aが賠償すべき損害額は右と同額であり、Yらが賠償すべき損害額は過失相殺後の3624万2755円である。そして、本件てん補額3000万円を右5738万4362円から控除すると、Bの残損害額は2738万4362円となるから、Yらが賠償すべき損害額は、右と同額となる。また、X1の損害についても、以上と同様であって、X1がてん補を受けるべき損害額は57万6747円であるところ、Aが賠償すべき損害額は右と同額であり、Yらが賠償すべき損害額は過失相殺後の37万4885円であって、本件てん補額29万2860円を右57万6747円から控除すると、X1の残損害額は28万3887円となるから、Yらが賠償すべき損害額は、右と同額になる。

交通事故に関して、共同不法行為における過失相殺と損害の一部填補が他の共同不法行為者に及ぼす影響についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、交通事故については、仙台の法律事務所による交通事故のご相談もご覧ください。