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【交通事故】【判例・裁判例】自賠法72条1項によりてん補すべき損害額と労災保険法に基づく年金額の控除

 
Xは、平成15年11月1日、通勤のために普通乗用自動車を運転中、信号を無視して進行してきた自動車に衝突され、同自動車は、そのまま走り去り行方不明となってしまいました。
Xは、同衝突事故により、頸椎骨折、頸髄損傷、脊髄損傷、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、平成16年12月1日、第7頸髄節残存・以下完全四肢麻痺、膀胱直腸障害、脊柱変形障害等の後遺障害を残して症状固定しました(当時66歳)。なお、同後遺障害は、自動車損害賠償保障法施行令別表第1第1級1号に該当します。
Xは、症状固定したことにより、労災保険法に基づく障害年金の受給権を取得し、平成17年1月17日、その支給決定(年額130万2080円)を受けました。Xが平均余命期間上記支給決定に係る年金額の支給を受けると仮定した場合における支給総額の現在額は、1622万6520円です。
Xは、平成17年2月25日、国に対し、自賠法72条1項前段に基づく損害のてん補を請求しました。国は、Xの後遺障害による損害額を3935万円と算定し、同金額から上記1622万6520円を控除した残額2312万3480円を支払うこととし、同年7月19日、Xに対し、これを支払いました。
Xが、てん補額に不服があるとして自賠法施行令が定めるてん補限度額と既払いてん補額との差額の支払いを求めて裁判を起こしたところ、被害者が自賠法73条1項所定の他法令給付に当たる年金の受給権を有する場合に、政府が同法72条1項によりてん補すべき損害額を算定するに当たって控除すべき年金の額が問題になりました。

これについて、裁判所は、被害者が自賠法73条1項所定の他法令給付(同項に掲げる法令に基づく同法72条1項による損害のてん補に相当する給付)に当たる年金の受給権を有する場合において、政府が同法72条1項によりてん補すべき損害額は、支給を受けることが確定した年金の額を控除するのではなく、当該受給権に基づき被害者が支給を受けることになる将来の給付分も含めた年金の額を控除して、これを算定すべきである旨判断しました。

(最高裁判所平成21年12月17日第一小法廷判決)

交通事故に関して、自賠法72条1項によりてん補すべき損害額と労災保険法に基づく年金額の控除についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、交通事故については、仙台の弁護士による交通事故のご相談もご覧ください。