【交通事故】【判例・裁判例】自賠法16条1項に基づく請求権の額と労災保険法12条の4第1項により国に移転して行使される請求権の額の合計額が自賠責保険の保険金額を超える場合の被害者と国の優先関係
Ⅹは、トラック乗務員として中型貨物自動車を運転中、反対車線から中央線を越えて進入したA運転の加害車両と正面衝突するという交通事故に遭い、左肩腱板断裂等の傷害を負いました。そして、Ⅹには、左肩関節の機能障害等の後遺障害が残ってしまいました。
この交通事故が労災と認定され、Ⅹに対し、労災保険給付として、療養補償給付、休業補償給付及び障害補償給付が行われました。これにより、ⅩのY社(Aが加入していた自賠責保険の保険会社)に対する自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払請求権が、労災保険法12条の4第1項により、上記の労災保険給付の価額の限度で国に移転しました。
Aが任意保険に加入していなかったことから、Ⅹは、Y社に対して、自賠法16条1項に基づき、損害賠償額の支払と遅延損害金の支払を求める裁判を起こしたところ、被害者の行使する自賠法16条1項に基づく請求権の額と労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転して行使される請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超える場合に、被害者は国に優先して損害賠償額の支払を受けられるかが問題になりました。
これについて、裁判所は、交通事故の被害者が労働者災害補償保険法に基づく給付を受けてもなお塡補されない損害について自賠法16条1項に基づく請求権を行使する場合は、他方で労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転した上記請求権が行使され、被害者の上記請求権の額と国に移転した上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超えるときであっても、被害者は、国に優先して自動車損害賠償責任保険の保険会社から上記保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができる旨判断しました。
(最高裁判所平成30年9月27日第1小法廷判決)
交通事故に関して、自賠法16条1項に基づく請求権の額と労災保険法12条の4第1項により国に移転して行使される請求権の額の合計額が自賠責保険の保険金額を超える場合の被害者と国の優先関係についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
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