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【交通事故】【判例・裁判例】搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」の意義

 
Aは、その所有する普通乗用自動車につき、保険会社であるY社との間で、搭乗者傷害保険を含む自動車保険契約を締結していました。同保険契約中搭乗者傷害保険に関する条項は、自家用自動車保険普通保険約款中の搭乗者傷害条項に従ったもので、「被保険自動車の正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者が、被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被り、その直接の結果として、事故の発生の日から180日以内に死亡したときは、死亡保険金500万円を被保険者の相続人に支払う」旨が定められていました。
なお、A所有自動車はいわゆる貨客兼用自動車(ステーションワゴン)であり、後部座席の背もたれ部分を前方に倒して折り畳むことで、折り畳まれた後部座席背もたれ部分の背面と車両後部の荷台部分とが同一平面となり、これを一体として利用することができる構造になっていました。
ある日、Aは、当該自動車にBを同乗させて運転していました。その際、当該自動車の後部座席は折り畳まれた状態で、その場所には洗剤、鍋等の商品が積まれており、Bは、その場所に商品の脇に少し身体を起こした状態で横たわって乗車していました。A所有自動車は、国道上において転回中に後方から走行して来た大型貨物自動車に追突されるという交通事故に遭い、貨物積載用扉が開き、Bは商品と共に路上に投げ出され、脳挫傷等の傷害を負って死亡してしまいました。
Bの相続人であるXらが、前記の搭乗者傷害条項に基づいて、Y社に対してBの死亡による保険金の支払を求めたところ、Y社は、前記のような場所に乗車していたBは搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」に該当しないと主張しました。そのため、搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」の意義が問題になりました。

これについて、裁判所は、自家用自動車保険普通保険約款の搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」とは、乗車用構造装置がその本来の機能を果たし得る状態に置かれている場所をいい、いわゆる貨客兼用自動車の後部座席の背もたれ部分を前方に倒して折り畳み、右背もたれ部分の背面と車両後部の荷台部分とを一体として利用している場合には、右の場所は、自家用自動車保険普通保険約款の搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」に当たらない旨判断しました。

(最高裁判所平成7年5月30日第三小法廷判決)

交通事故に関して、搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」の意義についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、交通事故については、仙台の弁護士による交通事故のご相談もご覧ください。