【交通事故】【判例・裁判例】共同暴走行為における被害者側の過失
AとBは中学校時代の先輩と後輩の関係であり、平成13年8月13日午後9時ころから、友人ら約20名と共に、自動二輪車3台、乗用車数台に分乗して、集合、離散しながら、空吹かし、蛇行運転、低速走行等の暴走行為を繰り返しました。Bは、ヘルメットを着用せずに、消音器を改造した自動二輪車にAと二人乗りし、交代で運転をしながら走行していました。
O県警察K警察署のCらは、付近の住民から暴走族が爆音を立てて暴走している旨の通報を受け、同日午後11時20分ころ、これを取り締まるためにCが運転するパトカー及び他の警察官が運転する小型パトカーの2台で出動しました。
Cは、国道を走行中、同日午後11時35分ころ、AとBが乗る自動二輪車が対向車線を走行してくるのを発見し追跡しましたが、同自動二輪車が転回して逃走したためこれを見失い、いったん本件国道に面した商業施設の駐車場に入ってパトカーを停車させました。また、小型パトカーも商業施設の駐車場に入って停車していました。同駐車場先の国道は片側1車線で、制限速度は時速40kmでした。
同日午後11時49分ころ、Aが運転しBが同乗した自動二輪車が国道を時速約40kmで走行してきたため、Cは、これを停止させる目的で、パトカーを本件国道上に中央線をまたぐ形で斜めに進出させ、AとBが乗る自動二輪車が走行してくる車線を完全にふさいだ状態で停車させました。
付近の道路は暗く、パトカーは前照灯及び尾灯をつけていましたが、AとBが乗る自動二輪車に遠くから発見されないように、赤色の警光灯はつけず、サイレンも鳴らしていませんでした。
Aは、商業施設の駐車場内に小型パトカーが停車しているのに気付き、時速約70~80kmに加速して同駐車場前を通過し逃走しようとしましたが、その際、友人が捕まっているのではないかと思い、小型パトカーの様子をうかがおうとしてわき見をしたため、前方に停車したパトカーを発見するのが遅れ、回避する間もなく、その側面に衝突してしまいました。
Bは、この事故により頭がい骨骨折等の傷害を負い、同月14日午前1時13分ころ死亡してしまいました。
そのため、Bの両親であるXらが、AとO県に対して損害賠償を求める裁判を起こしたところ、Aの過失をBの過失として考慮することができるかが問題になりました。
これについて、裁判所は、 Aが運転しBが同乗する自動二輪車と、これを停止させる目的で前方の路上に停車していたパトカーとが衝突し、Bが死亡した交通事故につき、Bの相続人が上記パトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において、(1)AとBは、上記交通事故の前に上記自動二輪車を交代で運転しながら共同して暴走行為を繰り返し、上記パトカーに追跡されていたこと、(2)Aは、道路脇の駐車場に停車していた別のパトカーを見付け、これから逃れるため制限速度を大きく超過して走行するとともに、その様子をうかがおうとしてわき見をするという運転行為をしたため上記交通事故が発生したものであることなど判示の事実関係の下では、Aの上記(2)の運転行為はAとBが共同して行っていた上記(1)の暴走行為の一環を成すものとして、過失相殺をするに当たり、Aの上記(2)の運転行為における過失をBの過失として考慮することができる旨判断しました。
(最高裁判所平成20年7月4日第二小法廷判決)
交通事故に関して、共同暴走行為における被害者側の過失についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
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