【交通事故】【判例・裁判例】交通事故と医療事故の競合
自転車に乗っていたA(6歳の男児)が、交差点内でZの運転するタクシーと接触する交通事故に遭い、転倒し頭部などを負傷しました。
Aは事故後直ちに救急車でY病院に搬送されましたが、Y病院の医師Bは、Aの訴え内容や、Aの意識が清明であったことなどから、歩行中の軽微な事故であると考え、さらにレントゲン写真で頭がい骨骨折を発見できなかったことから、CT検査をしたり、病院内で経過観察をすることなく、負傷部分の消毒と抗生物質の投与だけで、「何か変わったことがあれば来るように」などといった一般的な指示のみでAを帰宅させました。
ところが、帰宅後、Aの容体が急変し、死亡してしまいました。死因は、頭蓋外面線状骨折による硬膜動脈損傷を原因とする硬膜外血しゅでしたが、硬膜外血しゅは、早期に血しゅの除去を行えば、予後は良く、高い確率での救命の可能性がありました。
そのため、Aの両親であるXらはZとY病院の行為がAに対する共同不法行為に当たるとしてY病院に対して損害賠償の裁判を起こしたところ、その中で、Y病院が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することができるか、どのように過失相殺を行うかが問題となりました。
これについて、裁判所は、前者については、交通事故と医療事故とが順次競合し、そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり、結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し、責任を負うべき損害額を限定することはできない旨判断し、後者については、過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない旨判断しました。
(最高裁判所平成13年3月13日第三小法廷判決)
交通事故に関して、交通事故と医療事故の競合についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。
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