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【パワハラ・セクハラ】【判例・裁判例】セクハラ等を理由としてされた懲戒処分の有効性

 
Y社は、水族館の経営等を目的とする株式会社で、X1はY社の営業部サービスチームのマネージャーであり、X2は営業部課長代理でした。Y社の営業部事務室内では、X1、X2のほか、女性従業員Aを含む20数名が勤務していました。また、Y社は、職場におけるセクハラの防止を重要課題として位置付け、研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるほか、セクハラ禁止文書を作成して従業員に配布し、職場にも掲示するなど、セクハラの防止のため種々の取組みを行っていました。
平成22年11月ころから、X1は、従業員Aに対し、自らの不貞相手に関する事柄や、性欲等についての発言を繰り返すなどし、また、X2も従業員Aらに対して下品な言葉で侮辱し、困惑させるような発言を繰り返していました。
Y社は、セクハラ行為等を受けた旨の申告を従業員Aらから受け、Xらから事情聴取等を行ったうえで、X1、X2の行為がセクハラ禁止文書の禁止行為に該当するとして、出勤を停止する旨の懲戒処分をしました。また、Y社は、X1、X2が出勤停止処分を受けたことを理由に、X1、X2を降格することを決定しました。さらに、X1、X2は、出勤停止処分および降格により、給与および賞与を減額等されました。なお、従業員AはXらのセクハラ行為が一因となって退職してしまいました。
そのため、X1、X2が、Y社に対し、出勤停止処分は無効であり、それを前提とする降格処分もまた無効であるなどと主張して、出勤停止処分の無効確認や降格前の等級を有する地位にあることの確認等を求めて裁判を起こしたところ、懲戒処分の有効性が問題になりました。

これについて、裁判所は、会社の管理職である男性従業員2名が同一部署内で勤務していた女性従業員らに対してそれぞれ職場において行った性的な内容の発言等によるセクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた出勤停止の各懲戒処分は、次の(1)~(4)など判示の事情の下では、懲戒権を濫用したものとはいえず、有効である旨判断しました。
(1) 上記男性従業員らは、①うち1名が、女性従業員Aが執務室において1人で勤務している際、同人に対し、自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器、性欲等についての極めて露骨で卑わいな内容の発言を繰り返すなどし、②他の1名が、当該部署に異動した当初に上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていながら、女性従業員Aの年齢や女性従業員A及びBが未婚であることなどを殊更に取り上げて著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し、女性従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどとやゆする発言をするなど、同一部署内で勤務していた派遣労働者等の立場にある女性従業員Aらに対し職場において1年余にわたり多数回のセクシュアル・ハラスメント等を繰り返した。
(2) 上記会社は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止を重要課題と位置付け、その防止のため、従業員らに対し、禁止文書を周知させ、研修への毎年の参加を義務付けるなど種々の取組を行っており、上記男性従業員らは、上記の研修を受けていただけでなく、管理職として上記会社の方針や取組を十分に理解して部下職員を指導すべき立場にあった。
(3) 上記(1)①及び②の各行為によるセクシュアル・ハラスメント等を受けた女性従業員Aは、上記各行為が一因となって、上記会社での勤務を辞めることを余儀なくされた。
(4) 上記出勤停止の期間は、上記(1)①の1名につき30日、同②の1名につき10日であった。

(最高裁判所平成27年2月26日第一小法廷判決)

パワハラ・セクハラに関して、セクハラ等を理由としてされた懲戒処分の有効性についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、パワハラ・セクハラについては、仙台の弁護士によるパワハラ・セクハラのご相談もご覧ください。