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【労災・過労死・過労自死】【判例・裁判例】過労自殺と使用者の損害賠償責任

 
Xらの長男Aは、大学卒業後の平成2年4月、大手広告代理店であるY社に入社しました。
Aは、Y社のラジオ関係部署に配属されましたが、当初から、長時間にわたる残業を行うことが常況となっており、これは次第に悪化する傾向にありました。Y社においては、残業時間は従業員が自ら申告することとされていたところ、Aの申告した残業時間の月間合計の値は、三六協定で定められた上限の前後となっていましたが、Aの申告に係る残業時間は、実際のものよりも相当少なく、Aは、業務遂行のために徹夜まですることもある状態でした。Aの上司らは、このような状況を認識していましたが、具体的な対応としては、平成3年3月に、直属の上司Bが、Aに対し、業務は所定の期限までに遂行すべきことを前提として、帰宅してきちんと睡眠を取り、それで業務が終わらないのであれば翌朝早く出勤して行うようになどと指導したのみでした。
Aは、同年7月には、業務の遂行とそれによる睡眠不足の結果、心身共に疲労困ぱいした状態になり、このころ、Bは、Aの健康状態が悪いのではないかと気付いていました。こうしたことが誘因となって、Aは、遅くとも同年8月上旬ころに、うつ病にり患しました。
Aは、同月23日から26日にかけて出張を伴う業務を終え、同月27日午前6時ころに帰宅した後、午前10時ころに風呂場でい死しているところを発見されました。
Aの親であるXらは、Y社に対し、不法行為又は安全配慮義務違反によるAの損害賠償請求権を相続により取得したと主張し、裁判を起こしたところ、長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合の使用者の民法715条に基づく損害賠償責任の成否、業務の負担が過重であることを原因として心身に生じた損害につき労働者がする不法行為に基づく賠償請求において使用者の賠償額を決定するに当たり、労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を斟酌することの可否が問題になりました。

これについて、裁判所は、前者について、大手広告代理店に勤務する労働者Aが長時間にわたり残業を行う状態を1年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、Aは、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、Aの上司は、Aが業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、Aに対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、その結果、Aは、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘因となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなどの事情の下においては、使用者は、民法715条に基づき、Aの死亡による損害を賠償する責任を負う旨判断し、後者については、業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法722条2項の類推適用により右労働者の心因的要因として斟酌することはできない旨判断しました。

(最高裁判所平成12年3月24日第二小法廷判決)

労災・過労死・過労自死に関して、過労自殺と使用者の損害賠償責任についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労災・過労死・過労自死については、仙台の弁護士による労災・過労死・過労自死のご相談もご覧ください。