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【労災・過労死・過労自死】【判例・裁判例】くも膜下出血が業務上の疾病にあたると判断された事例

 
Xは、保険会社の支店長付運転手として働いていました。また、使っていた自動車の清掃、整備等もXの職務とされていました。
昭和56年7月から、Xの勤務時間は早朝から深夜に及ぶようになりました。昭和58年1月~昭和59年5月11日までのXの時間外労働時間は1か月平均約150時間、走行距離は1か月平均約3500キロで、昭和58年以降、1日平均の時間外労働時間は7時間を超えていました。
昭和59年5月10日、Xは、午後11時ころまで自動車の修理をし、睡眠時間が3時間半程度の状態で、翌11日の早朝、支店長を迎えに行きました。そして、その途中で気分が悪くなり、くも膜下出血を発症しました。なお、Xは、昭和56年10月及び昭和57年10月の健康診断で血圧が正常と高血圧の境界領域にありましたが、治療の必要のない程度でした。
Xは、くも膜下出血により休業したため、労働基準監督署長Yに対し、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づき、休業補償給付の請求をしましたが、業務上の疾病には当たらないとして不支給処分を受けました。そのため、Xは不支給処分を不服として、その取り消しを求めて裁判を起こしたところ、Xに生じたくも膜下出血が業務上の疾病にあたるかが問題になりました。

これについて、裁判所は、支店長付きの運転手として自動車運転の業務に従事していた者が早朝支店長を迎えに行くため運転中くも膜下出血を発症した場合において、同人が右発症に至るまで相当長期間にわたり従事していた業務は精神的緊張を伴う不規則なものであり、その労働密度は決して低くはなく、発症の約半年前以降は1日平均の時間外労働時間が7時間を上回り、1日平均の走行距離も長く、発症の前日から当日にかけての勤務も、前日の午前5時50分に出庫し、午後11時ころまでかかってオイル漏れの修理をして午前1時ころ就寝し、わずか3時間30分程度の睡眠の後、午前4時30分ころ起床し、午前5時の少し前に当日の業務を開始したというものであり、それまでの長期間にわたる過重な業務の継続と相まって、同人にかなりの精神的、身体的負荷を与えたものとみるべきであって、他方では、同人は、くも膜下出血の発症の基礎となり得る疾患を有していた蓋然性が高い上、くも膜下出血の危険因子として挙げられている高血圧症が進行していたが、治療の必要のない程度のものであったなどの事情の下においては、同人の発症したくも膜下出血は業務上の疾病に当たる旨判断しました。

(最高裁判所平成12年7月17日第一小法廷判決)

労災・過労死・過労自死に関して、くも膜下出血が業務上の疾病にあたると判断された事例についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労災・過労死・過労自死については、仙台の弁護士による労災・過労死・過労自死のご相談もご覧ください。