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【労働問題】【判例・裁判例】労働協約による労働条件の不利益変更

 
各種損害保険業を営むY社は、昭和40年にA社の鉄道保険部を合体、同部の従業員428名はY社の従業員となり、同部従業員で組織する組合も、Yの従業員で組織されるZ組合Y支部に統合されました。
本件合体に伴い、就業時間、退職金、賃金制度等の労働条件については、鉄道保険部出身の労働者の労働条件をそれ以外の労働者の基準に引き上げることで昭和47年までに順次統一されましたが、定年の統一についてはY社とZ組合の交渉が難航し、鉄道保険部出身の労働者が満63歳、それ以外が満55歳とされたままでした。
しかし、Y社は、昭和52年度の決算において実質17.77億円の赤字を計上するという経営危機に直面したこともあり、合体以来の懸案事項である定年・退職金制度の統一をはかるべく、Z組合との交渉を重ね、Z組合も、昭和58年、常任闘争委員会や全国支部闘争委員会の討議、組合員による職場討議や投票等を行った上、昭和58年7月、満57歳をもって定年とする旨(満60歳までは特別社員として正社員の60%に相当する賃金で再雇用可能)の労働協約が締結され、退職金規程も労働協約に合わせて改定されました。
Xは、昭和28年にA社鉄道保険部に入社し、本件合体でY社の従業員となり、本件協約締結時、満53歳で組合員でしたが、上記協約が適用されると、満57歳になった昭和61年8月には雇用関係は終了し、退職金の支給基準率も71.0から51.0に下がることになりました。そのため、XがY社に対し、満65歳定年制を前提とする労働契約上の地位と退職金の支払を受ける権利を有することの確認を求める裁判を起こしたところ、労使が従前の労働条件を不利益に変更する内容の労働協約を締結したときに、その協約の規範的効力が労働者に及ぶかが問題になりました。

これについて、裁判所は、 定年の改定及び退職金支給基準率の変更を主たる内容とする労働協約に定められた基準を右協約締結当時53歳であった組合員甲に適用すると、甲は、定年が63歳から57歳に、退職金支給基準率が71.0から51.0に引き下げられるという不利益を受けることになる場合であっても、甲が雇用されていた会社には、定年が63歳の従業員と55歳の従業員とがあり、定年の統一が長年の懸案事項であったところ、会社は、右協約締結の数年前から経営危機に陥り、定年の統一と退職金算定方法の改定を会社再建のための重要な施策と位置付けて組合との交渉を重ね、組合も、その決議機関における討議のほか、組合員による職場討議や投票等も行った上で右協約の締結に至ったものであり、右組合員の63歳という従前の定年は、特殊な事情に由来する当時としては異例のものであって、右協約に定められた定年や退職金支給基準率は、当時の業界の水準と対比して低水準のものとはいえないなどの事実関係の下においては、甲に対する右協約の規範的効力を否定する理由はない旨判断しました。

(最高裁判所平成9年3月27日第一小法廷判決)

労働問題に関して、労働協約による労働条件の不利益変更についての最高裁判所の判例を紹介させていただきました。

なお、労働問題については、仙台の弁護士による労働問題のご相談もご覧ください。